世界に一つだけの花

大乗仏教の経典『阿弥陀経』の中にこんな一節があります。

「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光」

これは、仏様が弟子に極楽浄土のありさまを語る部分で「極楽の池の中に無数の大輪の蓮の花が咲いている。青い色の花には青い光が射し、黄色の花には黄色い光、赤い花には赤い光、白い花には白い光が射す。それらはいずれもすばらしく美しい」 と続きます。

花の色は人間の個性を表しています。青い花が青く輝いて青く見える。当たり前の事のように感じますが、10人いれば顔かたちや性格や才能がみんな異なるのに、人と比べて自分が違うと落ち込んだり、背伸びして疲れてしまったり日本人は特に多いのかもしれません。個性で光るという事は言い換えれば、自分で嫌だなと思っている部分があるかもしれないけれどありのままの自分を肯定し、輝いて生きていく事と言い換える事が出来るのかもしれません。

10数年前、成人式の準備をしようとどんな振袖や髪型にしようか、晴れの日を思い描いておりました。私は小さい頃から、両親の顔色を伺って言いたい事を言えない子でしたので、意を決してピンクの花柄がいいと母に着たいイメージを伝えようとしました。私の先回りで話をしてくる母でしたので、この時も伝える前に「着物はあるから」と言われてしまいました。色を聞くと「水色」との事。後日、タンスから襟の部分だけ見せてもらい、エメラルドともターコイズとも言えない鮮やかな色で、色味は綺麗だからまぁいいかとその日は終わりました。

成人式成人式を目前に控え、初めて振袖の全容を見た時、愕然としました。なんと柄が何も描かれていなかったのです。柄があるのが当たり前と思っていたので肩を落としてしまいました。そして当日は寒さもあるだろうし、ショールを羽織りたいと母に言いました。「あるから任せて!」とみんな着けている白いふわふわが出てくると思ったら、式当日、なんと濃い灰色の若者がしないような物が出てきました。着けないよりか着けた方がいいと、会場に向かいました。会場に着き、周りを見渡してみると柄のない着物なのも、濃い灰色のふわふわを付けているのも私だけで、一人だけみんなと違う事が苦しくて仕方ありませんでした。

品物の良さも、そして祖母から母へ、母から私へ受け継がれる素晴らしさに気づく事も出来ない自分がそこにはいました。式のあと、急いで帰宅し振袖を脱いで打ち上げに出かける時、髪とメイクは成人式仕様のまま服は普段着というちぐはぐなスタイルでしたが、みんなと同じ格好になれた事で妙な安堵感を感じた事を覚えています。

月日が流れ、その時は脱ぎたくて仕方なかった振袖も、今は本当に素晴らしい振袖を着せてもらったなぁと自然と思えるようになりました。無地の振袖だったからこそ、黒地に様々な色で刺繍された帯が引き立ったのだと写真を見ても母に感謝しています。その時、人と違っていて不安でしたが、そのままで素敵に輝いていたんだなぁと、写真を見る度そして成人の日が来る度に思い出します。そして、この経験から自分では人と違って嫌だなと思っている部分が客観的に見てみたら光輝いて見えることもあるのだという事に気づき、人と比べたり背伸びしたりしない自分が今ここにいます。

SMAPが「世界に一つだけの花」で歌ってくれています。私たちは世界に一つだけの花であるという事を。私たちが比較や偏見を捨てて、ありのままの自分で命を輝かせていく。

世界中の皆さんが「オンリーワンの私」で胸を張って自分の輝きを放っていけますように。。。

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