寒い冬の幻

2,000年前に成立されたとされるヨーガの根本経典「バガバッド・ギーター」。
この経典の中には私達の人生をより素晴らしいものにしてくれる古代賢者の様々な智恵が記されています。その中で登場人物である神の化身クリシュナが迷える戦士アルジュナに対し「なぜあなたは嘆くべきでないことに対して嘆くのか?」と問いかけます。迷える戦士アルジュナは私達人間の心の在り方の象徴として描かれています。

ストレス社会を生きる私達の多くは悩む必要の無い事に悩んでしまっているのではないでしょうか?まだ起こってもいない事を勝手に心配してしまったり、急に先行き不安になってしまったり、まるで湧き出る水の如くネガティブな感情が私達の心を不安にさせます。しかし生きていく中で、ネガティブな感情は必ず必要になってきます。例えば交差点を渡る時、全てをポジティブに考えたとします。車は来ないだろうと確認もしないで交差点を渡ってしまえば交通量の多い都会では、すぐに事故に遭ってしまいますし、それでは命がいくつあっても足りませんよね。その様に考えた時、我が身を守る術として私達は本能で物事をネガティブに捉えてしまう習性があるのかもしれません。ですが、そればかりになってしまうと心配事ばかりが増え、日々の生活を心から楽しむことが難しくなってしまうのではないでしょうか。

私は2歳になるパグ犬を飼っています。名前は「バブオ」と言います。パグは非常に寒さに弱く、そして暑さにも弱いとてもデリケートな犬種です。夏場や冬場は常にエアコンを付けて室温を一定にしておかないと、すぐに体調を崩してしまいます。私達家族はバブオの事をとても可愛がっているのですが一つだけ悩みがあります。それはとても獣臭い事です(笑)。自宅にはヨガスタジオもあり獣臭いままでは生徒さんも心地良くヨーガを出来なくなってしまいますので、定期的にトリミングに行き匂いを取ってもらっています。そして、その日は朝からトリミングの予約が入っていたので寒さで震えるバブオを車に乗せ出発をしました。霜が降りる程寒い朝だったので、私は暖かい飲み物が飲みたくなり途中コンビニに寄りました。車のエンジンはまだ温まっておらず、すぐに戻るから大丈夫だろうとバブオを車内に残し車のエンジンをかけたままコンビニへ向かいました。すると後ろで「ガシャッ!」という音がしたので振り返るとバブオが私を追いかけようと運転席側のカギに手をかけ、なんと車の中から鍵を閉めてしまいました。

「バブオ!カギを開けて~!」と何度言ったところで開けてくれるはずもありません。寒さでブルブルと震えながら、助けを求めるバブオを救出するにはどうすればいいのか?スペアキーを持っていればすぐに救出できるのですが、その時に限ってスペアキーは実家に置いて来てしまいました。実家に電話を掛けカギを持って来てもらえる事になりましたが、実家からここまではどんなに急いでも40分はかかってしまいます。私も薄着で車外に出てしまった為、寒さに耐えられずコンビニへ避難しましたが何だか落ち着きません。私の不注意で車内に取り残され、寒さに苦しむバブオの顔がどうしても頭に浮かび、自分のミスを責めてしまいました。「ひょっとしたら病気になってしまうのではないか・・・」と心配にもなってきてしまいました。40分後ようやく父が到着しカギを受取り急いで車に駆け寄ると、バブオはシートにうずくまったままピクリとも動きません。「ひょっとして余りの寒さで死んでしまったのでは‼」「自分はなんて馬鹿なことをしてしまったのだ!!」と急いでカギを開けました。すると、どうでしょう・・・!?ヒーターのスイッチがちゃんと入っていたようで、車内はとても温かくバブオは心配をよそに、いびきをたてながら気持ち良さそうに寝ているだけでした。(笑)

結局私は起きてもいない事をネガティブに想像して嘆いていただけでした。それからは、これを教訓にいつでも客観的に物事を捉えるようになりました。表面上だけで物事を捉え悲観的に考えるのも止めました。すると以前はプライベートや仕事で先行きが不安になる事もあったのですが、不安という霧も晴れ、日々の生活を心から楽しむ事が出来る様になりました。それもこれも愛犬バブオのおかげかも知れません。この様にして私達の多くは自らが生み出したネガティブな現実と言う幻に惑わされているだけなのかもしれません。

米国ミシガン大学の研究チームが行った調査によると、心配事の80パーセントは起こらないそうです。起きるのは残り20パーセントですが、その内の8割は予め準備をしておけば心配事に至らずに解決できるそうです。つまり本当の心配事はたったの4パーセントだけ。私達は、このたった4パーセントの発生確率にも関わらず、不安や心配という行為に多くの時間を割いてしまっているのではないでしょうか?私達の心が作り出してしまう不安という幻に惑わされる事なく、人生を心から楽しんでいきましょう!

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